岩崎学園の教育システム
横浜リハビリテーション専門学校での実践とリハビリ人材育成
概要: 岩崎学園の教育システムは、創立100年の教育実績と、脳科学・学習心理学・教育工学の13の理論を統合した「再現性のある成長環境」です。東京大学・池谷裕二教授の監修のもと、学生を「丸暗記の苦痛」から「医学を学び、対象者を支えることを自ら楽しむ力を持つ人材」へと育てる3段階のフェーズ設計と、AI・LMSを活用した伴走型サポート体制を、横浜リハビリテーション専門学校で実装しています。本ページでは、岩崎学園グループ共通の教育システムと、それを当校のリハビリ専門医療教育へ落とし込んだ具体的な実践例を公開しています。

学校法人岩崎学園 横浜リハビリテーション専門学校は、理学療法士・作業療法士として誰かの「もう一度」を支えたいと願う高校生の熱い想いを、確かな医学的根拠に基づく技術へと変える独自の教育システムを構築しています。
高度なリハビリ知識や難関の国家試験対策を「丸暗記の苦痛」にするのではなく、脳科学に根ざした分散学習や、やる気のスイッチを強制的にオンにするBERIを導入しています。学習の習慣化を自然に促し、初めての医療知識に対しても「理解できる、実践できる」という強固な有能性を育てます。患者様の人生に伴走する力を、科学的なアプローチで身につけます。
目次
1. 入学から卒業まで 成長の階段(3つのフェーズ)
2. 教育理論との紐付けと、当校での実践例
2-1. 意欲と主体的行動を引き出す「動機づけ・マインド理論」
2-2. 記憶の定着と習慣化を科学する「認知・学習理論」
2-3. 実践の質を高める「経験と振り返りの理論」
2-4. 行動変容を導く「評価・コミュニケーション理論」
3. 担任システム(伴走型サポートシステム)の詳細
3-1. 学生が語る、岩崎学園の担任の本当の姿
4. 教職員の10の行動指針
5. 結びにかえて
1. 入学から卒業まで 成長の階段(3つのフェーズ)
横浜リハビリテーション専門学校のカリキュラムは、自己決定理論(SDT)とコルブの経験学習モデルを基盤に、学生の心理的成長に合わせて介入度を綿密にコントロールする「3段階のフェーズ」で設計されています。

フェーズ①:【基礎学習】有能性を身につける(主に入学初年度)
初めて解剖学や生理学、リハビリテーション医学の高度な専門領域に触れる1年生の初期は、「理系の難しい医学知識についていけるだろうか」「患者様と上手く話せるだろうか」という強い不安を抱いています。この時期の目標は、科学的なカリキュラムによって「医学学習の習慣化」を図り、「自分にも身体のメカニズムが理解できる、評価ができる」という確かな自信(有能性)を育てることです。
- アプローチ: 根性論や個人のやる気に依存せず、授業の中に「まず骨模型や互いの身体に触れて動かす」「最初と最後で脳に記憶を定着させる」システムを導入。教員による積極的な介入と「学びのプロセスへの承認」により、成長をデータとして客観的に実感させ、医療人としてのエンジンを立ち上げます。
フェーズ②:【経験学習】省察・概念化と成功体験(主に2〜3年次)
専門知識を蓄えた学生は、病院やリハビリ施設での「臨床実習」という、実際の対象者様と向き合う本格的な実践の場へと進みます。この時期の目標は、臨床現場での評価の難しさや、治療アプローチにおける成功・失敗を確かな臨床推論力へと変える「経験学習サイクル」の定着です。
- アプローチ: 教科書通りにはいかない病態や患者様の心理という「望ましい困難(少しの凹凸)」がある環境を経験します。教員や臨床実習指導者は答えを一方的に教え込むのをやめ、学生自身にクリニカル・リーズニング(臨床省察)を促す「ファシリテーター(伴走者)」となり、関係性を担保しながら「臨床家としての成長」をサポートします。
フェーズ③:【自律学習】楽しむ力を持つ人材へ(主に卒業年次)
最終段階では、指導者の評価を気にする段階を超え、学生が理学療法士・作業療法士の卵として、自らの意志で対象者様の生活を支えるために動き出す状態を目指します。
- アプローチ: 獲得した医療技術を、国家試験合格のためだけでなく「対象者様のニーズに合わせた願いを叶えたい」という内発的動機(自律性)へと昇華させます。臨床の複雑な課題さえも「自らの専門性を深めるクエスト」として知的に楽しめる自律的な姿勢を完成させ、医療・福祉の現場へと送り出します。
2. 教育理論との紐付けと、当校での実践例
これらの成長の階段を支えるのが、東京大学大学院の池谷裕二教授の監修による脳科学・学習心理学のエビデンスです。当校では、これらの理論を日々の授業運営や作品制作のプロセスにダイレクトに組み込んでいます。
2-1. 意欲と主体的行動を引き出す「動機づけ・マインド理論」
① 自己決定理論(Self-Determination Theory : SDT)
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理論の解説: 心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンによって体系化された動機づけの理論です。人が他者から強制されずに自発的に行動し、優れた成果を出し続ける(内発的動機づけ)ためには、「有能感(自分には能力があるという感覚)」「関係性(他者とつながり、認められているという感覚)」「自律性(自分の意志で行動を選択しているという感覚)」という3つの心理的欲求が満たされることが不可欠であると定義されています。
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現場でのつながり: 医療・リハビリの専門職を目指すハード日常の授業や臨床実習を乗り越えるには、外発的な義務感や漠然とした不安感だけでなく、学生自身が「自ら学びたい」という内発的な動機づけを育む必要があります。グループワークや縦割り学習による「関係性」の構築、小テストや実技評価の可視化による「有能感」の醸成、そして面談や振り返りを通じた「自律性」の獲得を、学校の仕組みとして多角的に支援しなければならないためです。
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実践・成功例:
【有能感の醸成】: 頻繁な確認テスト・小テストで小さな達成感を積み重ね、できるようになったことを言葉にして伝えます。実技評価の結果はレーダーチャートなどで可視化し、自分の到達度を客観的に把握させています。また、国家試験対策では点数や分野別正答率をグラフ化し、成長を見える化しています。
【関係性の構築】: 上級生が下級生に教えるスタイル(縦割り学習)を導入。上級生は事前学習で知識が深まり、下級生は相談しやすいつながりが生まれます。実習振り返りではポスター作成・掲示を行い、他学生や教員から付箋でコメント(承認)を得る仕組みを構築。ホームルームやスクールカウンセラーと連携した面談で、安心して相談できる関係を整えています。
【自律性の獲得】: 成績低迷者や学習困難者に対し、「現状認識 →目標設定→具体的対策」の流れで伴走型の個別面談を実施。試験結果をもとに学生自身に課題を振り返らせ、次の目標を設定させます。課題やテーマの選択に自由度を持たせることで、「自分で決めた」という感覚を支えています。
② フロー理論(Flow Theory)
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理論の解説: 心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した、人間が時間を忘れるほど目の前の活動に完全に没頭し、最高のパフォーマンスを発揮している精神状態(フロー状態)に関する理論です。フロー状態に入るためには、「課題の難易度」と「本人のスキルレベル」が絶妙なバランスで均衡していること(難しすぎて不安にならず、簡単すぎて退屈しない領域)が必要不可欠です。
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現場でのつながり: リハビリの基礎知識(解剖生理学、臨床医学など)や技術(血圧測定、触診など)は、未熟な段階では「難しすぎて不安・挫折」に繋がりやすく、逆に慣れてくると「退屈」になりがちです。学生を没頭(フロー)させるには、スキルレベルに応じた段階的な課題設定と、適度な緊張感・達成感を生む環境づくりが求められるためです。
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実践・成功例:
段階的な難易度調整と時間確保: 実技授業では学生が「できた感覚」をつかめるよう時間を長めに確保。スキルが未熟な1年次前期は、ハードルの低い課題から始め、徐々に難易度を適応させます。早期から実技試験を経験させ、臨床実習への実践的な足場かけとします。
心理的安全性と導き: 授業中の問いかけに対し、解答が間違っていても否定せず、その内容から正答へつながるよう教員が導きます。これにより「間違えても大丈夫」という安心感が生まれ、学生が黙らずに挑戦するようになります。
ピア・ラーニングと相互支援: 4人程度のグループワークを授業内に数回挟み、メリハリをつけます。成績優秀者と低迷者を混ぜたグループにすることで、個人では難しい課題も相互支援で達成し、学習方法を学び合えるようにしています。
能動的な仕掛けと可視化: 血圧測定などの実技では、制限時間内での測定を競わせたり、対象(模擬患者)を順繰りに変えることで適度な緊張感を維持させます。また、中間テストの問題を学生自身に作問させる(高度な課題)ことで、深い学習と達成感に繋げています。国家試験対策や週間行動表を用いた進捗確認により、個人に合わせた無理のない挑戦を支えています。

③ BERI(やる気を出す方法)
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理論の解説: 本教育システムの監修者である池谷裕二教授の知見などに基づく、脳科学に根ざした教育システムの根幹をなすフレームワークです。脳のやる気を司る部位は、自分の意思(精神論)ではコントロールできません。しかし、【B】Body(カラダを動かす)、【E】Experience(いつもと違うことをする)、【R】Reward(ごほうびを与える)、【I】Ideomotor(なりきる)という4つのアプローチを連動させることで、感情(やる気)の有無に関わらず、脳を強制的に、かつスムーズに学習モードへと誘うことができるシステムです。
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現場でのつながり: 学生に「やる気を出しなさい」と精神論で訴えても効果はありません。講義、実技、臨床実習、国家試験対策などのあらゆる場面において、脳の特性に適合した具体的な行動トリガー(仕掛け)をカリキュラムや指導に組み込む必要があるためです。
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実践・成功例:
【B: Body(身体を動かす)】: 講義中にストレッチや休憩を意識的に挟み、集中を維持。触診のペア練習、車椅子体験・障害者体験など、身体感覚を伴う実技・体験型学習を通して「できた感覚」や専門職としての課題意識を引き出します。
【E: Experience(いつもと違う経験をする)】: 上級生が下級生に教える相互学習や、実習振り返りのポスターセッション(掲示・コメント付与)など、日常と異なる学びの場を提供。学生自身にテストの5肢択一問題を作問させる、動作観察課題で「学習前後のアウトプット」を比較させるなど、変化が見えやすい刺激を与えます。
【R: Reward(ごほうび・承認)】: 良い回答を即座に褒める、レポートの「良い点」と「課題点」を明確にして返却する、少しの成長でも見逃さずに承認するアプローチを徹底。スタンプラリーや週1回のテストで登校・学習時間確保のモチベーションを維持させ、表彰やポスターへのコメント付与によって他者からの承認(ごほうび)をシステム化しています。
【I: Ideomotor(なりきる)】: 実技授業で「理学療法士役・作業療法士役」と「患者役」を演じ分け、専門職像を具体化。上級生が下級生に教えることで「先輩(指導者)」として振る舞う自覚を芽生えさせます。教員の臨床エピソードを用いた問いかけや、模擬症例・動画を用いた「自分ならどうするか」の思考を通じて、専門職の視点を先取りさせます。
④ ローゼンタール効果(Rosenthal Effect:ピグマリオン効果)
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理論の解説: 教育心理学における高名な心理効果で、「人間は他者から期待されると、その期待に沿った成果を出すようになる」という現象です。逆に、指導者が「この学生は作品のセンスがない」と心のどこかで諦めていると、それが無意識の態度や言葉に表れ、本当に学生の制作意欲やクオリティが低下してしまう(ゴーレム効果)ことも実証されています。
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現場でのつながり: 膨大な知識や高度なリハビリ技術の習得において、学生が自信を失いかける場面は多々あります。教員が学生に対して「あなたならできる」「期待している」という肯定的な期待を意図的・継続的に伝え続けることで、自己効力感を高め、挫折を防ぎ行動変容を促す必要があるためです。
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実践・成功例:
授業中のポジティブフィードバック: 毎授業で学生に問題を考えさせ、良い回答にはその場で褒めます。質問や解答に対しては、正誤にかかわらず「発言・挑戦したこと」自体に肯定的なフィードバックを行い、安心して参加できる空気を作ります。
成果物への肯定的アプローチ: 個別面談やホームルームで、実習の成果物やレポートの「できた点」をまず明確に認めてから、改善点を示します。これにより学生は自己効力感を維持したまま、次年度に向けた行動を内省できるようになります。
小さな成長の言語化: 学習強化組の学生には「週間行動表」を記載させ、わずかでも学習時間が増えていれば褒めます。目標に達していなくても、小さなアクションや変化を肯定的に捉えて言葉にすることで、継続意欲を支えます。国家試験対策でも「なぜ解けるようになったか」の理由を本人に確認させ、成長の因果関係を自覚させます。
期待をかける役割の付与と第三者評価: 多少の不安があっても、ボランティア活動などでグループリーダーに任命し、責任感と成長を促します。実習振り返りのポスターに教員や他学生から付箋でポジティブなコメントを寄せる仕組みも、期待と承認を視覚化する効果を上げています。
⑤ ダニング・クルーガー効果(Dunning–Kruger Effect)
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理論の解説: 社会心理学者のデヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが提唱した、人間の認知特性に関する理論です。「ある領域において未熟な人ほど、自分の実力を正確に測る物差し(メタ認知能力)を持たないため、自分の実力を過大評価(自信過剰)しやすい」という現象を指します。これは一見すると認知のエラー(勘違い)のように思えますが、教育においては「未熟だからこそ、プロの壁の高さに怯むことなく、根拠なき自信を持って前向きにチャレンジし続けられる」という、脳の極めてポジティブな初期ブースターとして機能します。自分の未熟さに足を止めることなく、純粋に「楽しんで作り続けること」ができるからこそ、その圧倒的な行動量の先に真の成長がもたらされます。
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現場でのつながり: 入学初期や新しい専門科目を学び始めたばかりの学生は、自分の実力を正確に評価できません。これを「見通しが甘い」と一蹴するのではなく、「恐怖を抱かずに楽しんでやり続けられる初期エネルギー」として前向きに捉え、まず挑戦させ、徐々に客観的な結果(テストや実技評価)を通して本当の実力へと安全に軟着陸させる指導が求められるためです。
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実践・成功例:
未熟な段階での挑戦と承認: 毎授業で問題を考えさせて褒める、良い回答を称賛するなど、根拠なき自信であってもまずは動いたこと(成功体験)を評価します。
失敗を恐れない環境の構築: 「授業中に間違えることは、他の学生の学びになる」と言語化して伝え、誤答であっても正答に繋がるよう優しく誘導します。未熟な段階の自信を削ぐことなく、発言・挑戦を継続させます。
因果関係による自己認識の修正: 国家試験対策の個別面談の際、実力試験の結果から「解けるようになった分野は、なぜ取れたのか」を具体的な行動(勉強法)と結びつけて確認させます。“できたつもり”から、実際の行動と結果の因果関係を自覚させ、客観的なメタ認知能力を育てていきます。
(補足)一般的な誤解について: ビジネス書やSNS等において、ダニング・クルーガー効果は「初心者が自信満々の状態から、挫折して『絶望の谷』に落ち、そこから這い上がる」という曲線グラフとともに紹介されることが多々あります。しかし、これは後世の俗説(ミーム)であり、実際のダニングとクルーガーの論文(1999年)にはこのようなプロセスやグラフは登場しません。 実際の理論が証明しているのは、「未熟な人ほど、自分の現在地を測る物差しを持たないため、無自覚に自信過剰になりやすい」という認知の仕組みそのものです。当校では、この「無自覚だからこそ、恐怖を抱かずに楽しんでやり続けられる」という本来の心理効果のメリットに着目し、初期の強力な行動エネルギーとして教育システムへ落とし込んでいます。

2-2. 記憶の定着と習慣化を科学する「認知・学習理論」
⑥ エビングハウスの忘却曲線と「分散学習」
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理論の解説: 心理学者ヘルマン・エビングハウスが実験によって明らかにした、人間の記憶の保持に関する理論です。人間は覚えた直後から猛烈な勢いで忘却が始まり、1日後には約7割を忘れてしまいます。この忘却に抗い、知識を長期記憶として定着させるためには、一度に詰め込む(集中学習)のではなく、あえて時間を空けて「直後、1日後、1週間後、1ヶ月後」と定期的に復習を繰り返す「分散学習(Spaced Repetition)」が極めて有効であるとされています。
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現場でのつながり: 解剖生理学をはじめとする膨大な医学知識ならびに基礎知識・専門知識が求められる国家試験対策では、短期的な詰め込みではすぐに忘却され、臨床現場で役に立ちません。「学んだ直後に思い出す」「忘却し始める絶妙なタイミングで再接触する」という分散学習の流れを、学生個人の裁量ではなく、学校の授業設計やカリキュラム自体に仕組みとして組み込む必要があるためです。
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実践・成功例:
授業内の想起サイクル: 授業開始前の10分間で前回のポイントを復習し、授業終わりには重要なポイントを学生同士でアウトプット(説明)させます。さらに授業の最後に確認問題や国家試験の過去問を解かせることで、「直後」と「1週間後」の想起をシステム化しています。
学年間での反復カリキュラム: 基礎となる「解剖生理学」などを1〜3年次で繰り返し扱う設計にすることで、年次をまたいだ長期的な分散学習を実現。上級生が下級生に教える縦割り学習も、既習内容の強力な再整理(復習効果)として機能しています。
習慣化の伴走支援: 毎週の小テスト、中間試験、過去問アプリの活用に加え、学習習慣が弱い学生(学習強化組)には「週間行動表」や「学習計画表」を用いて学習時間の増減を見える化し、忘却に抗う継続的な反復学習を定着させています。

⑦ 初頭効果・終末効果
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理論の解説: 人間は提示された情報の「最初(初頭効果:Primacy Effect)」と「最後(終末効果:Recency Effect)」に接した情報が、最も記憶に残りやすく印象に残りやすいという脳の認知特性です(Murdock, 1962)。初頭効果は長期記憶に、終末効果は短期記憶(ワーキングメモリ)に強く依存しているとされています。
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現場でのつながり: 90分という長い授業において、最も集中力が高まる冒頭(初頭)を出席確認やだらだらとした事務連絡で消費し、最後(終末)をバタバタとした片付けで終えてしまうのは、脳の記憶のゴールデンタイムを無駄にしている状態です。特に90分授業に慣れていない1年生の集中力を維持し、最重要ポイントを脳に刻み込むためには、授業の導入と終末を意図的にデザインする必要があるためです。
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実践・成功例:
授業冒頭(初頭効果)の活用: 授業開始直前の10分間で前回の重要ポイント振り返りや確認問題を実施。また、序盤に印象的な症例検討や問題提示を行うことで、「どこが今日の重要ポイントか」を意識させ、学生の注意を一気に授業へと惹きつけます。
授業終盤(終末効果)の活用: 授業の最後には、その日の講義内容に関する確認問題を解かせる、または大事な要点を学生同士でアウトプットさせ、短期記憶が鮮明なうちに知識を強く印象づけて定着させます。
中盤のコントロール: 最も集中力が落ちる中盤には、5分程度の休憩やストレッチ、軽い身体運動を挟んでリフレッシュさせます。あるいは、講義を2セクションほど進めた段階で学生同士の説明ワーク(グループワーク)を挟むなど、集中を要するものを最初と最後に配置するメリハリのある構成を徹底しています。
⑧ ラーニングピラミッド(Learning Pyramid)
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理論の解説: アメリカの国立訓練研究所(NTL)などの研究で知られる、学習方法の違いによる「平均学習定着率」を表したモデルです。受動的な講義の聴講や読書に比べ、グループ討論、自ら体験する、そして「他の人に教える」という能動的なアクティブ・ラーニング(能動的学習)の方が、高い定着効果を発揮するとされています。
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現場でのつながり: 教員が一方的に話を進める座学だけでは、リハビリ専門職に必要な生きた知識や臨床スキルは身につきません。クラスメイトとの対話、学内での実技演習、そして臨床現場や地域社会(当事者)とのリアルな接続を通じた能動的なアウトプットの機会を、カリキュラムの随所に配置しなければならないためです。
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実践・成功例:
他の人に教える: 総合学習やベーシックスタディにおいて、上級生が下級生に勉強を教える相互学習を実践。また、授業内でも問題の答えを学生同士で話し合い、理由を説明し合うワークを取り入れ、相互に理解を深めています。
自ら体験する: 触診・聞き取りのペア練習、模擬事例での評価項目立案に加え、車椅子体験や障害者体験を実施。実際の不自由さや課題を身をもって体験することで、専門職としての視点を自発的に考えさせます。
討論・共有する: 臨床実習の振り返りをグループでポスターにまとめ、掲示・発表。教員や他学年の学生から多面的なコメント(フィードバック)を受けることで、受動的な実習体験を能動的な深い学びへと昇華させています。

2-3. 実践の質を高める「経験と振り返りの理論」
⑨ コルブの経験学習サイクル(Experiential Learning Model)
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理論の解説: デービッド・コルブが提唱した、具体的な経験を真の成長へと変えるための4段階のサイクル理論です。人間は、単に何かを「① 経験」するだけでは成長しません。その経験を客観的に深く振り返る「② 省察」を行い、そこから「次に活かせる教訓やルール」を導き出す「③ 概念化」を経て、それを新しい状況で「④ 実践」に試す。この4つのステップを回すことで初めて、経験が再現性のある真の実力へと昇華されます。
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現場でのつながり: 外部施設で行う臨床実習は貴重な「経験」ですが、ただ行って帰ってくるだけでは「大変だった」という単なる思い出や、場合によっては実習のトラウマで終わってしまいます。実習で得た気づきや課題を言語化し、多様な視点から捉え直して次の学習や次年度の実習に活かすための「省察・概念化」の場を、学校側が意図的に用意する必要があるためです。
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実践・成功例:
実習振り返りポスターセッション: 臨床実習の終了後、グループごとに経験を振り返ってポスターにまとめて掲示・発表(経験 → 省察 → 概念化)。教員や他学生から多面的なコメントをもらうことで、学びを客観的に整理し、今後の学習(実践)へと繋げています。
実習評価表を活用した自己省察: 実習評価表をもとに、項目ごとに自己の良かった点・改善点を具体的に記入。さらに「昨年度はできなかったが、今年度できるようになったこと」を個人で記述・記録に残す仕組みを構築し、次年度の実習前に再確認させることで確実な成長サイクルを回しています。
他者への発信を通じた概念化: 上級生が下級生に実習や勉強の仕方を教える形式を導入。自分の「経験」を後輩に伝えるために、事前学習を行い知識やアプローチを再構成(概念化)させることで、上級生自身の理解を一段と深めています。

⑩ 成長差分の可視化(進捗の法則)
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理論の解説: ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビール教授らの研究「進捗の法則」に基づくアプローチです。人間のモチベーションを最も高めるのは、高額な報酬や大絶賛ではなく、「日々、自分が前進している(成長している)という小さなしるしや実感を自覚すること」であるとされています。
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現場でのつながり: 「国家試験合格」や「プロフェッショナルな臨床スキルの獲得」といった最終目標はあまりにも遠く、日々の地味な基礎の積み重ねの中では、学生は自分の成長を実感できず不安(五里霧中)になりがちです。他者との比較で自己肯定感を下げるのを防ぐため、知識・技能・態度の多角的な視点から「過去の自分からの前進(成長差分)」を経時的に見える化する仕組みが必要であるためです。
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実践・成功例:
実技・技能のレーダーチャート化: コミュニケーションスキルや実技スキルに対し客観的な評価点を設定。実習前後のOSCE(客観的臨床能力試験)の結果をレーダーチャート等のデータで提示することで、実習による自身の技能面の成長差分を視覚的に実感させています。
国家試験対策のデータグラフィック化: 模擬試験や実力テストごとに点数や「分野別正答率」をグラフ化。問題別正答率の経時的変化を示すことで、「解くべき問題」が解けるようになっている小さな前進を視覚的に自覚させます。
学習時間とプロセスの視覚化: 学習強化組では、1週間の生活状況や勉強時間をシートに記入させ、計画表や達成度を示すことで、積み上がった努力を可視化します。また、実習後に「昨年度はできなかったが、今年度できるようになったこと」を記述させ、ポスター発表等を通じて他者からの承認を得ることで、継続的な有能感を支えています。
2-4. 行動変容を導く「評価・コミュニケーション理論」
⑪ PNP法(Positive-Negative-Positive)
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理論の解説: コミュニケーションや指導におけるフィードバックの技法です。相手の課題や修正点を伝える際に、それを単体で伝えるのではなく、まずは相手の優れている点や努力したプロセスを褒め(Positive)、その後に具体的な改善点を提示し(Negative)、最後は今後の期待やポジティブな言葉で挟んで締めくくる(Positive)というサンドイッチ型の伝達技法です。
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現場でのつながり: 特に専門的な実技やレポート、臨床実習の成果物に初めて取り組む学生の心は非常に繊細です。良かれと思って結果のダメ出し(Negative)だけを行うと、心理的安全性が崩壊し、リハビリ職への挑戦意欲自体を喪失してしまいます。学生が拒絶されたと感じず、前向きに課題と向き合い、自律的な内省(行動変容)へと向かわせるための配慮が必要なためです。
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実践・成功例:
授業内・実技での即時フィードバック: 問題を考えさせた後、正誤だけでなく「回答に至った視点やプロセス」をまず褒めます(P)。間違いがあっても否定せず、良い部分を拾いながら修正点を伝え(N)、達成レベルに到達した段階でその場ですぐに称賛します(P)。
レポート・成果物の添削: レポート返却時、良い点と課題点を明確に表示して返却。個別面談やホームルームでは、実習成果物の「工夫された点」を先に具体的にフィードバック(P)した上で、次年度に向けた改善点を一緒に整理し(N)、最後は「あなたならできる」「この分野での活躍を楽しみにしている」と個別具体的な期待の言葉(P)で締めくくります。
成績低迷者への伴走面談: 週間行動表の確認時、学習時間が少しでも改善していれば徹底的に肯定します。目標未達であっても責めることなく、小さなアクションの変化を認めた上で、「どうすればさらに時間を作れるか」を学生自身に検討させ、次の一歩を支えます。
⑫ 情報源信頼性理論(Source Credibility Theory)
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理論の解説: コミュニケーション心理学における基礎理論の一つで、「人間は、当事者が直接発信する情報よりも、利害関係のない第三者による情報(口コミや外部専門家の評価など)の方を信頼する」という心理効果(ウィンザー効果)を説明したものです。情報の受け手は、発信者が「何を発信しているか」だけでなく、「その発信者は信頼できる立場か(客観性)」を無意識に評価しているとされています。
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現場でのつながり: 担任や日頃から接している教員が学生に対して伝えるメッセージは極めて重要ですが、学生側が「先生はいつも厳しいから」「身内だから」と主観的なバイアスを抱いてしまい、行動変容に繋がりにくい場合があります。メッセージの信頼性と納得感を最大化するためには、学外のプロフェッショナルや先輩など、客観的な立場にある「第三者」の声を戦略的に介入させ、同じ価値観をフィードバックさせる必要があるためです。
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実践・成功例:
臨床実習指導者との教育目標の同期: 学内で教員が伝えることと、実習先で臨床実習指導者(現場のプロ)から指導される内容を完全に一致させます。学生が実習先で「まさに今、現場で必要なのはその力だ」と同じフィードバックを受けることで、理論の信頼性が確信に変わり、実習後の劇的な行動変容へと繋がっています。
外部講師・卒業生の戦略的招聘: 科目担当教員以外の外部講師や、現場で活躍する卒業生を実技授業や特別講義に積極的に招聘。外部の客観的な立場から「ここができているね」と褒めてもらう、あるいは臨床現場のリアルな声を伝えてもらうことで、学生の専門職イメージの形成と学習意欲を強力にプッシュしています。
間接的フィードバック(第三者伝聞): クラスメイトや他の教員が学生を褒めていた内容を、担任が面談や会議、デジタルカルテ等を介して共有し、「さっき〇〇先生から聞いたよ。実技の片付けを率先してやってくれてたんだってね」と、あえて第三者経由で本人に戻すアプローチを組織的に実施し、良い行動や習慣の強化を促しています。
⑬ ゲーミフィケーション(Gamification)
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理論の解説: ゲームが持つ「人を熱中させる要素(明確な目的、即時フィードバック、スコアの可視化、スモールステップの課題など)」を、教育などのゲーム以外の領域に応用し、モチベーションを爆発的に高める手法です。
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現場でのつながり: 「分厚い医学書を順番に読み、疾患名や解剖の知識、実技の手順をひたすら暗記する」という平坦な学習スタイルは、脳にとって非常に退屈で苦痛を伴います。「勉強させられている」という受動的な感覚を消し去り、学生が自ら進んで「課題をクリアしてスコアを上げるクエスト」のように主体的に学び続けられる仕掛けが求められるためです。
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実践・成功例:
学生による試験問題の作成(作問クエスト): 中間テストの5肢択一問題を学生自身に作成させます。質の高い良問は実際の定期テストに正式採用する仕組みを導入。作問というやや高度なゲーム的課題に挑む過程で、楽しさと達成感を伴いながら知識の深掘りが実現しています。
実技のタイムトライアルと変動要素: 血圧測定などの基礎実技の習得場面において、「制限時間内に正確に測定できるか」をゲーム感覚で競わせたり、測定対象(模擬患者)を順繰りに変える変動要素を取り入れ、適度な緊張感を保ちながら熱中させています。
3. 担任システム(伴走型サポートシステム)の詳細
横浜リハビリテーション専門学校の「クラス担任制」は、教員個人の経験則や熱意といった属人性だけに頼るものではありません。データフロー図(DFD)に基づき、科学的に組織全体で学生一人ひとりを包み込む「伴走型サポートシステム」を確立しています。

学生の「生データ」を網羅する学生カルテ:
教員と学生の接点は、定期面談や授業内だけに留まりません。廊下での立ち話、放課後の何気ない会話、保護者様とのコミュニケーションに至るまで、教職員が気づいた学生の「生データ」はすべてリアルタイムで学生カルテに蓄積・集約されます。(※蓄積されたデータは、学園の個人情報保護方針に基づき厳重に管理され、学生のサポート目的以外に利用されることはありません)
学年(横串)× 学科(縦串)による迅速な方針決定:
カルテに集まったデータをもとに、学年会議(横串)と学科会議(縦串)を定期的に開催。一人の担任の視野に依存せず、多角的な視点から「今、この学生にどのようなアプローチが必要か」の支援方針を組織として決定します。
教職員を強力にバックアップする「AIシステム」:
学生指導AI: 蓄積されたカルテデータから、学生のエンゲージメント低下や小さな予兆をいち早く察知し、教員へのアラートや適切な対応法のヒントを提示します。
チームによる多層サポート:
クラス担任が中心軸となりつつ、授業担当教員、国試担当教員、学科担当教員がカルテを通じて状況を共有。状況に応じて、担任以外の最適な職員がアプローチできる体制を整えています。
3-1. 学生が語る、岩崎学園の担任の本当の姿
岩崎学園の教育システムを、実際に体験している学生たちの声でお伝えします。以下、学校・先生のイニシャルは個人特定を避けるため一部表記を変えています。
実習に行けなくなりそうな私を「学校にいる間は私が見てるから」
精神的に不安定で実習に行けなくなりそうだった時、I先生が「学校にいる間はいつでも相談にのるよ」って笑ってくれて、ホッとしました。早めにカウンセラーさんに繋いでくれたし、その手前で「カウンセラーさんと話す前に少し整理していこうね」って気軽に話を聴いてくれて、本当に救われました。
「なんで忘れたの?」じゃなく「次どうしたら忘れない?」と聞いてくれた
M先生は、僕が課題を忘れて謝った時、「なんで忘れたの?」じゃなくて「次どうしたら忘れない?」って聞いてきた。怒られると思ってたから拍子抜けして、その場で「メモ取ります」って自分で答えてた。それ以来メモの取り方変わったし、実習地で先生に評価されたって伝えたら、自分のことみたいに喜んでくれて、なんかこっちが泣きそうになった。
※ 本ページに掲載のエピソードは、横浜リハビリテーション専門学校の在校生・卒業生の声から、本人同意の上で掲載しています。学校名・先生のイニシャルは、個人特定を避けるため一部を変更しています。
4. 教職員の10の行動指針
この高度な教育システムを正しく機能させ、学生に安心感と挑戦への意欲を与えるために、横浜リハビリテーション専門学校のすべての教職員は、以下の10の行動指針を徹底しています。
1. 否定から入らず「共感」から
「難しい医学知識についていけるだろうか」「対象者様と上手く話せるだろうか」という学生が抱く強い不安を、まずはありのまま受け入れ、共感することから始めます。技術的なミスや知識不足を否定するのではなく、その試行錯誤の背景を理解し、心理的安全性を担保することが、医療人としての主体的な学びの土台となります。
2. 自分語りより傾聴を重視
教員の臨床経験を一方的に語り聞かせるのではなく、学生の言葉に耳を傾け、心の中にある「どんなセラピストになりたいか」という想いや課題を引き出します。学生自身が「なぜこの臨床推論に至ったのか」を丁寧に聴き、自律的な成長をサポートします。
3. 知ったかぶりはしない
医学やリハビリテーション技術は日々進化しており、教員も万能ではありません。最新のエビデンスや臨床知見に対して、分からないことは誠実に認め、学生と共にリサーチし、共に学び続ける「生涯学習者」としての背中を見せます。
4. 考えを押し付けず共に考える
臨床実習や演習において、正解の評価や治療プランを安易に指示するのではなく、学生自身が思考し、納得のいく答えにたどり着けるようファシリテート(伴走)します。対象者様にとって最善のケアは何かを、学生と同じ視線で模索します。
5. できないと決めつけない
学生の可能性に限界を設けません。入学時の学力や技術の習得状況に関わらず、「適切な環境とアプローチがあれば、必ず誰かの『もう一度』を支えるプロになれる」という絶対的な信頼を原点に接します。
6. 自ら楽しみ好奇心を持つ
教員自身が、身体のメカニズムやリハビリテーションがもたらす変化を楽しみ、新しい知見や社会の変化に好奇心を持ち続けます。教員がワクワクしながら専門性を深める姿が、学生の「自ら楽しむ力(内発的動機)」を刺激する最大の教育となります。
7. 関係職員と情報共有に努める
学生の小さな成長や実習前後の不安を組織全体で支えるため、学生カルテへの入力や情報共有を徹底します。担任、学科、実習指導担当が連携し、一人の学生を多層的に見守ることで、迅速かつ適切なサポートを実現します。
8. 公平性を重んじる
特定の学生に偏ることなく、すべての学生に対して公平かつ誠実に向き合います。臨床実習の機会、学内プロジェクトの役割、ボランティア活動への参加など、全員がそれぞれの目標に向かって平等に「成長の打席」に立てる環境を厳格に守ります。
9. 学生の主体的活動に協力的である
「ボランティア活動のリーダーに挑戦したい」「自主的な勉強会を開きたい」といった学生の主体的な意欲に対し、全力でリソースの提供やバックアップを行います。学生が「やりたい」と手を挙げたことを尊重し、その行動を全力で支援します。
10. 学生に合った目標を定め、プロセスを褒める
他者との比較ではなく、その学生自身の成長ステップ(スモールステップ)に合わせた目標を共に設定します。試験の合否という結果だけでなく、地道な暗記の努力や、デイリーノートでの深い省察といった「払った労力(プロセス)」を承認し、日々の成長実感を支えます。
5. 結びにかえて:すべては、誰かの「もう一度」に伴走する医療人に「再現性のある成長」を届けるために
当校は、保護者の皆様が安心して未来を託すことができ、高校の先生方が自信を持って生徒を送り出すことができ、そして病院や福祉施設の皆様が成長を続けることができる「一理学療法士」「一作業療法士」として迎え入れたいと感じていただける、そんな自律性と省察力にあふれた専門職を育み続けることをお約束いたします。
コルブの経験学習サイクルを用いた建設的なリフレクション指導と、AIを活用した多層的なサポートにより、患者様の心と身体に深く寄り添い、医療現場の変化に柔軟に対応しながら自律して歩み続けられる医療人を社会へと送り出します。
【システム監修】
東京大学・大学院薬学系研究科 教授 池谷 裕二
日本が世界に誇る脳研究者の一人であり、岩崎学園総合教育アドバイザーとして本教育システムの監修を務める。専門分野は大脳生理学。とくに海馬の研究を通じて、脳の健康について探究している。著書に『海馬』『記憶力を強くする』『脳には妙なクセがある』などがある。脳の最先端の知見を老若男女、世界に向けて分かりやすく伝えている。「情報7daysニュースキャスター」(TBSテレビ)にコメンテーターとして出演中。 東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室
池谷教授メッセージ:
脳は、「やらされる」より「やりたい」と感じたとき、驚くほど活性化します。
岩崎学園が重視する「楽しむ力」と「自律性」は、学習効率を最大化する脳のメカニズムそのものです。ここで培った好奇心は、生涯にわたる皆さんの成長エンジンになるでしょう。
【教学責任者】
教育事業創造本部 本部長 伊藤泰宏
学校法人岩崎学園CDO(Chief Data Officer)・評議員。20年以上にわたり教育・学校マネジメントの現場で学生の成長に伴走。データサイエンスの専門家として学会・コミュニティでの研究・情報発信にも従事。現在は、100年の歴史を未来へつなぐため、脳科学・心理学・教育工学・データサイエンスを軸とした次世代教育システムの構築を主導している。岩崎学園の共通教育システム(全7校)の全体像はこちら
【参考文献・主要出典】
■ 基盤フレームワーク
- 池谷 裕二, 上大岡 トメ (2008). 『のうだま――やる気を出す脳の秘密』 ポプラ社. (③ BERI)
■ 動機づけ・マインド・認知理論
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (2000). “The ‘what’ and ‘why’ of goal pursuits: Human needs and the self-determination of behavior.” Psychological Inquiry, 11(4), 227-268. (① 自己決定理論)
- Csikszentmihalyi, M. (1990). “Flow: The Psychology of Optimal Experience.” Harper & Row. (② フロー理論)
- Rosenthal, R., & Jacobson, L. (1968). “Pygmalion in the classroom.” The Urban Review, 3(1), 16-20. (④ ローゼンタール効果)
- Kruger, J., & Dunning, D. (1999). “Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one’s own incompetence lead to inflated self-assessments.” Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121-1134. (⑤ ダニング・クルーガー効果)
■ 認知・学習・経験の理論
- Ebbinghaus, H. (1885). “Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentellen Psychologie.” Duncker & Humblot. (⑥ 忘却曲線と分散学習)
- Murdock, B. B., Jr. (1962). “The serial position effect of free recall.” Journal of Experimental Psychology, 64(5), 482-488. (⑦ 初頭効果・終末効果)
- National Training Laboratories (NTL). “The Learning Pyramid.” (⑧ ラーニングピラミッド)
- Kolb, D. A. (1984). “Experiential learning: Experience as the source of learning and development.” Prentice-Hall. (⑨ 経験学習モデル)
- Amabile, T., & Kramer, S. (2011). “The Progress Principle: Using Small Wins to Ignite Joy, Engagement, and Creativity at Work.” Harvard Business Review Press. (⑩ 進捗の法則・成長差分の可視化)
■ 評価・コミュニケーション・行動変容理論
- Hovland, C. I., & Weiss, W. (1951). “The influence of source credibility on communication effectiveness.” Public Opinion Quarterly, 15(4), 635-650. (⑫ 情報源信頼性理論)
- Deterding, S., Dixon, D., Khaled, R., & Nacke, L. (2011). “From game design elements to gamefulness: defining gamification.” In Proceedings of the 15th International Academic MindTrek Conference, 9-15. (⑬ ゲーミフィケーション)